16.物件を精査その1:用途変更


 宿泊施設は建築基準法上「特殊建築物」に該当します。これは建物面積が100㎡超の場合、「用途変更」の申請を役所にしないといけない、ということを意味します。そのためまずは物件の面積で用途変更の要否を確認します。

  • 物件の延床面積は100㎡以下か超か

⇒100㎡以下の場合は原則として用途変更不要です(※)。

⇒100㎡超の場合は以下のチェックも必要です。

  • 建物またはそのフロアの用途は何か
  • 検査済証はあるか(賃貸の場合大家が持っているか)

(※)100㎡以下でも、バストイレ、ラウンジなどの共用部分を除いて33㎡以上確保できないと今度は狭すぎてアウトですので要注意

 

 なお、改正旅館業法により、100㎡以下の物件なら、無理にゲストハウスに改装するよりもホテル・旅館営業許可をとったほうが「初期投資」が少ない環境になりました。利益よりも初期投資額のうほうに感心(あるいは制限)のある方は、先にこちらのページ(内部リンク)をご覧ください。


建物またはフロアの用途の確認方法

 その建物または建物内のフロアがどういう用途で登記されているのか、を確認しないといけません。(もし宿泊用途だったら、用途変更手続きが不要なのでラッキー!)

 不動産業者からの情報を鵜呑みにせず、気になる物件なら当該物件地域管轄の役所の建築課(名称は様々)に赴き、以下の手順で調べましょう。

  1. 建築計画概要書(※)」を閲覧したいと申し出る
  2. 場合によってブルーマップ(役所に備え付けてあることが多い)で地番を確認してくれと言われるので、確認して申請する。これは正式な地番と一般的な住所表示が違うことが多いためです。
  3. 「建築計画概要書」はその場で閲覧させてもらえますが、写しが欲しい場合は有料でゲット可能。これには設計者・監理者・施工者の住所・氏名等、敷地の地名地番、建築物の用途・構造規模等、付近見取図、配置図等が記載されています。

(※)古い物件の場合だと「建築確認台帳」のほうに記載されていますので、そちらの閲覧になる場合があります。

 

 100㎡超で且つ用途が宿泊用途(建築基準法別表第一の(二)に記載される病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎)でなかった場合は、「用途変更」の申請を役所の建築課にしなければいけません。この時、その物件の「検査済証」が必要になります。不動産屋を経由して必ず事前に有無を確認しましょう。


検査済証の有無で変わる用途変更プロセス

【検査済証があった場合】

 役所の指示に従い申請書を作成することになります(自分でできます。)大規模な建築物でなければ申請から2~3週間程度で役所の建築主事または委託を受けた指定管理機関により、建物のチェックがなされ、用途変更が完了します。つまり、検査済証がある物件であっても、2~3週間の用途変更申請期間、そしてその後、ようやく旅館業の申請を保健所にできますので許認可取得までさらに2~3週間と時間を要することになります。

 

【検査済証がなかった場合】

 「検査済証」がない場合、国交省のガイドラインに基づく「指定検査機関」に適法性の調査を依頼し、それを検査済証の代替にすることになります。指定検査機関はウェブ上で確認できます。しかし、この調査は200~300㎡前後の建物でも100万円ぐらいはかかります。また、その調査結果として、建物が適法でないと判断されれば、それまで、ですので覚悟がいります。費用・時間・覚悟を要する作業というわけです。


コラム:なぜ検査済証がないの?

  • 建築物を建てる時は、こんな物件を建てますよ~というのを役所に申請して審査を受けます。その後、交付されるのが「確認済証」で、この取得は法で義務付けられています

⇒確認済証交付後に前述の建築計画概要書(または建築確認台帳)が作成されるので、これにはすべての物件が載っています。

  • その後、本当に申請時の設計で建てましたよ~というのを役所に申請して検査を受けた時に交付されるのが「検査済証」ですが、この取得は任意でした(1999年まで)

 そのため、世の中には多くの「検査済証」のない物件が存在しますが、「建築計画概要書」から逸脱してないかぎり、違法建築ではないのです。しかし、検査済証がないと用途変更ができないため物件の再利用が進まない・・・。そこで2014年に「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を国土交通省が公表し、検査済証の無い物件に対して用途変更の道を作ったわけです。