民泊事業者における管理事業者の緩和


 民泊が解禁されてから2023年6月で5年となりますが、コロナの影響もあって、2023年時点では1.8万件程度の事業者となっています。ただこの背景には、家主不在型民泊(全体の約65%)に義務付けられている「住宅宿泊管理事業者」の数が限定的であるという理由も指摘されています。

 「住宅宿泊管理事業者」になるには原則として宅建やマン管の資格を有することが必要なため、ハードルが高いといわれ、家主不在型民泊の推進のボトルネックと言われています。そこで、2023年の夏より規制緩和が国土交通省により計画されています。上述の資格をもっていなくても27時間の講習を受ければ、「住宅宿泊管理事業者」になれるようにという規制の緩和ですね。


民泊を本当に観光に活かすためには


 ちなみに「住宅宿泊管理事業者」の登録数は2023年3月の時点では約2500業者となっています。1.8万件の民泊物件に対し、むしろ数だけ見ればすでに多いように感じます。それでは、なぜ国土交通省は規制を緩和したいのでしょうか。

 ズバリ、地方部の「空き家」問題の解決への糸口になりそうだからですね。昨今(日本では2021年ころから)アドベンチャーツーリズムに注目されるようになり、そこにはありのままの日常(外国人旅行者にとっては非日常)を体験させることが少人数・高単価なツーリズムのカギと記載があります。地方部に増えている「空き家(古民家など)」を「民泊」に転用できれば、空き家を管理してもらえる家主もうれしい、民泊の増加で旅行者もうれしい、というウィン・ウィンになるという構図です。

 しかし、観光の視点から見れば残念ながらハードウェアありきではありません。このホームページでは別のページでも解説していますが、民泊の醍醐味はホームスティ型にあり、外国人旅行者がときめくのは地域の人々の日常とふれあうヒューマンウェアの有無です。

 地方部に「住宅宿泊管理事業者」の管理する「民泊」があります、ではなく、その地方部の魅力を伝播するホスト役が「住宅宿泊管理事業者」の資格も持っているという図式でないといけないのです。不動産の管理で儲けたい人が「住宅宿泊管理事業者」になるのではなく、地域DMOが古民家を軸にした観光戦略を練る一貫として、そこの職員が当該事業者の資格をとるなど、観光戦略が先にないと正しい相乗効果は得られないでしょう。